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miniature parks

ミニチュアパーク

大股で、急速に進歩を遂げることを「巨人の歩み」と表現しますが、映像の世界では1839年の写真誕生をきっかけに、映像記録技術が巨人の歩みを記したことは周知の通りです。  デジタルカメラまでの写真の足取りが巨人の歩みなら、ピンホールカメラはまさしく「小人の歩み」です。暗い部屋で外の景色をさかさまに見ることができたとしても、それを手でなぞる以外は記録することなどかなわぬ夢でしかなかった紀元前からあまり進歩がありません。ピンホールカメラの、のろのろと、遅々として進まない技術。そして小さな開口部から少しずつゆっくりと取り込まれる光。スローなローテクです。  ガリバーは巨人の代名詞のように使われますが、スウィフトの「ガリバー旅行記」では小人となったガリバーも登場します。小人のガリバーは、ピンホールカメラの暗箱の中に自ら入って撮影できるほど十分小さい。自分の身の丈に相応しい、1ミリの何分の一という微小の穴から覗いた世界。急がなくてもいい。小人の歩みで矮小な世界を眺めるのも、そう悪くはありません。

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